日本蟻類研究会第56回大会で講演

講演要旨は次の通り。

熱帯雨林の幼木葉の花外蜜腺とアリ類

山岡寛人(元・東京大学教育学部附属中等教育学校、現・千葉県館山市在住)

 演者は近年、南米を中心に熱帯雨林を訪れている。熱帯雨林は次のような階層構造をもつ。林床、低木層、亜高木層、高木層、突出木層である。多くの場合、高木層は高さ30m、突出木層は60mになる。観察の中心は低木層までの動物と植物との間に示される相互作用である。とりわけ、アリと植物との関係に目が行く。熱帯林の特徴の一つとして、種の多様性が上げられる。隣同士で樹種が異なるのがふつうである。高木層でつくられる種子はさまざまな方法で母樹から離れたところに散布される。種子から発芽したものは高木では30m、突出木では60mにまで成長しないと安定した繁殖活動に入れない。この間の成長と食害からの回避への光合成産物の配分は重要な問題であるが、ほとんど調べられていない。そのうち、食害からの回避への投資として若い葉における花外蜜腺に注目した。花外蜜腺よるアリの誘引と食害の予防は暖温帯林より多く観察されるものと思われる。今回は、アマゾン源流の一つであるペルーアマゾン(Heath RiverとSandval Lake)での2008年、2009年のそれぞれ4−5月の観察を話題提供として紹介したい。

花外蜜腺に集まるアリたち(写真:山岡寛人 撮影:ペルーアマゾン)のいくつか